推薦入試・総合型選抜の時代に大事な力って?これからの入試の全体像
1. 今の大学入試は「推薦・総合型」が当たり前の時代に
1-1. 推薦入試・総合型選抜とは?一般入試との違い
「大学入試といえば、一般入試でしょ」と思っている保護者の方はまだ多いと思います。ただ、現在の大学入試は大きく「一般選抜」「学校推薦型選抜」「総合型選抜」という3つの枠組みに整理されています。
従来「AO入試」と呼ばれていたものは、2021年度から「総合型選抜」と名前も中身も整理されました。同じタイミングで「推薦入試」は「学校推薦型選抜」という名称になり、制度としてもルールが明確化されています。
それぞれのイメージを、保護者の方目線でシンプルにまとめると次のようになります。
・一般選抜:大学入学共通テストや個別試験(いわゆる一般入試)。学力試験の点数が中心。
・学校推薦型選抜:高校の校長先生の推薦を受けて出願。評定平均(内申点)と調査書、小論文や面接などで総合的に判断。
・総合型選抜:志望理由書、活動報告書、小論文、面接、プレゼンなどを組み合わせ、「その大学で学びたい理由」「その分野への適性」を多面的に見る入試。
一般選抜は「点数勝負」のイメージが強い一方で、学校推薦型・総合型は「これまでの学び方」「学校や地域での活動」「自分の考えを言葉にする力」など、子どもの姿をかなり立体的に見る選抜になってきています。
1-2. どれくらいの受験生が推薦・総合型で進学しているのか
では実際、推薦入試や総合型選抜で大学へ進学する生徒はどれくらいいるのでしょうか。
文部科学省などの公表資料をもとにした分析では、ここ数年の入試では、定員ベースで見ると「一般選抜:学校推薦型選抜:総合型選抜」の割合はおよそ「5:3:2」とされています。つまり、従来型の一般入試だけでなく、推薦・総合型の枠もかなり大きくなっているということです。
さらに、秋〜冬に結果が出る「年内入試」(学校推薦型選抜+総合型選抜)で合格し入学した学生は、最近の入試では全体の半数を超えるようになってきています。
別の全国調査でも、多くの大学で「学校推薦型選抜・総合型選抜」で入学している学生が4割以上、私立大学では6割程度になるケースもあると報告されています。
つまり、今の大学入試は「一般入試だけが本番」ではなく、「年内の推薦・総合型」と「年明けの一般選抜」をどう組み合わせるかが当たり前になりつつある、というのが全体像です。
2. 推薦入試・総合型選抜で求められる「3つの力」
2-1. まずは土台となる「評定(学校の成績)」
推薦入試・総合型選抜の話になると、真っ先に出てくるのが「評定平均(内申)」です。多くの学校推薦型選抜では「評定平均〇点以上」といった出願条件が設定されており、一部の総合型選抜でも成績が確認されます。
評定はテストの点数だけで決まるものではありません。授業態度、小テスト、提出物、グループワークへの参加状況、発表の様子など、日常の積み重ねが丁寧に記録されていきます。高校側から見ると、「3年間まじめに学んできたか」を示す、とても重要な情報です。
また、国が示す「学力の3要素」のうちの1つ目が「知識・技能」です。大学側は、推薦・総合型であっても、大学教育を受ける土台となる基礎学力(知識・技能)を調査書やテストでしっかり確認するよう求められています。
「うちは一般狙いだから評定はあまり…」ではなく、「どの入試を受けるにしても、評定は将来の選択肢を広げるパスポート」と考えておくとよいでしょう。
2-2. 「活動歴」と「主体性」をどう積み上げるか
今の大学入試で特に重視されている2つ目の要素が、「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」です。少し固い言葉ですが、イメージとしては「自分から動いて学びをつくる力」と「人と協力して何かを成し遂げる力」です。
大学入試のガイドラインでは、スポーツ・文化活動、ボランティア活動、生徒会や委員会活動、探究活動、コンテスト・資格取得、海外経験など、さまざまな活動歴を評価の材料として活用することが推奨されています。
ここで大事なのは、「立派な肩書きがあるかどうか」よりも、「どんな課題を見つけて、どんな工夫や努力をしたのか」というストーリーです。例えば、部活でレギュラーではなくても、練習メニューを改善したり、後輩の指導に力を入れたりした経験は、立派な主体性のエピソードになります。
保護者としては、「活動を増やしなさい」とプレッシャーをかけるよりも、子どもが興味を持っていることを一緒に言語化してあげたり、「それってどうやって実現できるかな?」と、次の一歩を一緒に考えてあげる役割が大きいです。
2-3. 面接・小論文で問われる「思考力・表現力」
3つ目の柱が、「思考力・判断力・表現力」です。これは、知識をどれくらい持っているかではなく、「知っていることをどう使って考え、相手に伝えられるか」を見る力です。
最近の大学入試では、教科試験だけでなく、小論文、プレゼンテーション、口頭試問などを活用して、志願者の「自分の考えを論理的・創造的に形成する力」「その過程や結果を効果的に表現する力」を評価することが重視されています。
実際の入試では、ニュースや身近な社会問題の資料を読んで自分の意見を書く小論文、スライドを使ったプレゼン、グループでのディスカッションなどが行われます。内容は難しく見えますが、基本は「情報を整理する」「自分なりの考えをつくる」「わかるように伝える」という3ステップです。
この力は、特別な受験対策だけで身につくものではありません。日頃から「なぜそう思うの?」「他の考え方はあるかな?」と問いかけをされる経験や、友達や家族と話し合う時間、短い文章でも自分の意見を書く機会の積み重ねが、面接・小論文での強さにつながります。
3. 中3〜高2の今からできる具体的な準備
3-1. 日々の授業とテストを「評定対策」に変えるコツ
中3〜高2の時期は、「評定の土台づくり」と「勉強の習慣づくり」を同時に進めるのに最適なタイミングです。
評定アップのために特別なことをする必要はありません。大切なのは、次のようなシンプルなサイクルを毎週回していくことです。
・授業中に「今日のポイント」を1つメモする
・その日のうちに5〜10分だけノートを見返す
・小テストやワークで間違えた問題に「×」印をつけて、週末にもう一度解き直す
この程度の復習でも、やるかやらないかで定期テストの点数が変わり、評定にも反映されていきます。逆に、テスト直前だけ一気に勉強する「一夜漬け」は、入試本番の力にも評定にもつながりにくい学び方です。
保護者としては、「今日の授業で一番印象に残ったことは?」「テストで間違えたところ、どこ改善できそう?」といった声かけをするだけでも、子どもの学びの質を上げるサポートになります。
3-2. 部活・委員会・探究活動の選び方・深め方
部活動や委員会活動、学校の探究活動、地域のボランティアなどは、「活動歴」と「主体性」を育てる大事なフィールドです。
どの活動を選ぶか迷ったときは、「何をやれば評定に有利か」ではなく、「どんな場面なら、この子が本気になって続けられそうか」という視点で考えてみてください。好きなこと・得意なことだけでなく、「ちょっと背伸びすればできそうなこと」を選ぶのがポイントです。
活動を深めるうえでは、次の3つを意識すると、入試の自己推薦書や面接でも話しやすくなります。
・その活動で「どんな役割」を担ったか(例:まとめ役・ムードメーカー・裏方など)
・「どんな課題」に気づき、「どんな工夫」をしたか
・その結果、「何が変わったか」「自分は何を学んだか」
これらをノートやスマホに簡単にメモしておくと、高2〜高3で志望理由書を書くときに大きな財産になります。
3-3. 家庭でできる「対話」と「振り返り」の習慣づくり
思考力・表現力を育てる一番身近な場が、実は「家庭での会話」です。特別な教材がなくても、日々の対話の中で入試で問われる力を育てることができます。
例えば、次のような質問は、子どもの考える力と表現する力の両方を引き出しやすいです。
・今日いちばん「がんばったこと」は何?
・それをやってみて、どんなことに気づいた?
・もし次に同じことをするなら、どこを変えてみたい?
ニュースや社会問題の話題を出すときも、「このニュース、あなたはどう思う?」とまず子どもの意見を聞き、そのあとで保護者の考えを共有する順番にすると、「自分で考えて話す」練習になります。
大切なのは、「正しい答え」を言わせようとしないことです。多少意見がずれていても、「そう思った理由をもう少し教えてくれる?」と、考えたプロセスに興味を持ってあげることが、入試で求められる思考力・表現力の土台になります。
4. 一般選抜とどう組み合わせる?これからの進路戦略
4-1. 「第一志望だけ一般」はリスクが高い時代に
先ほど見たように、大学の定員のうち、一般選抜だけでなく学校推薦型選抜・総合型選抜に振り分けられている枠が年々増えています。定員全体の割合としては、おおよそ「一般5:推薦3:総合型2」というイメージです。
そのため、「第一志望は一般入試一本で挑戦、滑り止めもすべて一般で」という戦略は、以前よりもリスクが高くなっています。単純に言えば、「推薦・総合型で合格するチャンス」を半分ほど使わずに戦うようなものだからです。
一方で、「推薦や総合型だけで決めてしまう」のも、合格先の幅を狭める可能性があります。子どもの性格や志望分野、評定や模試の状況によって、「年内入試」と「一般選抜」をどう組み合わせるかを考えることが大切です。
4-2. 我が子に合った受験パターンを考えるチェックポイント
受験パターンを考えるとき、保護者の方が押さえておきたいチェックポイントをいくつか挙げておきます。
・志望分野はどの程度固まっているか
→ 早い時期から分野がはっきりしている場合は、総合型選抜で「なぜこの分野を学びたいか」をアピールしやすくなります。
・評定(内申)の見通しはどうか
→ 高1〜高2までの評定が安定して高い場合は、学校推薦型選抜の選択肢が広がります。逆に、評定条件が厳しい大学は難しいかもしれません。
・記述・面接とマーク式テスト、どちらが得意か
→ 自分の考えを話したり書いたりするのが得意な子は総合型選抜との相性が良く、スピードと正確さで点を取るのが得意な子は一般選抜で強みを発揮しやすい、という傾向があります。
・どの時期に進学先を決めたいか
→ 高3の秋までに進学先をある程度確定させたいなら年内入試を軸に、じっくり学力を伸ばしてから決めたいなら一般選抜を軸に、という考え方もあります。
これらのポイントをもとに、「第一志望は年内入試+一般の併用」「第二志望は推薦中心」「私立は総合型も検討」など、いくつかのパターンを学校の先生や塾の先生とも相談しながら整理していけると安心です。
5. まとめ:入試が変わっても、「コツコツ力」が最強の武器
推薦入試・総合型選抜が広がり、大学入試は「評定・活動・思考力」を含めて多面的に子どもを見る時代になりました。これは見方を変えると、「テストの点数だけでは測れない力」に光が当たるようになったとも言えます。
一方で、根っこにあるのは変わりません。日々の授業を大切にすること、コツコツと定期テストや宿題に取り組むこと、自分の興味に素直に向き合って活動を続けること、そして自分の言葉で考えを伝えようとすること。こうした積み重ねが、そのまま入試で評価される方向に制度が変わってきているのです。
中3〜高2の今は、「評定・活動・思考力」の3つの力をゆっくり育てていける貴重な時間です。保護者の方には、「一般入試だけ」に視野をしぼるのではなく、お子さんの得意や個性を生かせる受験スタイルを一緒に探すきっかけとして、今回の内容を役立てていただければと思います。

