「塾にはちゃんと通っているし、宿題もそれなりにやっているはずなのに、テストの点が思うように伸びない…」
そんなモヤモヤを抱えている保護者の方は、とても多いです。
実は、「量はこなしている」のに成績が上がらないときは、勉強の“やり方”と“目標の立て方”、そして“家庭学習との連携”のどこかにズレがあることがほとんどです。
この記事では、塾での指導現場でよくあるケースや、保護者の方からのご相談内容をもとに、「塾に通っても成績が上がらない本当の理由」を、できるだけ分かりやすくお話しします。
「量はこなしているのに…」でよくある3つのパターン
① ノートはびっしり、でもテストでは解けない
授業中の板書も宿題も、ノートはきれいに埋まっている。
一見「しっかり頑張っている」ように見えますが、テストになると点数につながらない…というケースです。
このタイプは、「写す・眺める時間」が長く、「自力で解く時間」が短いことが多いです。
インプット(説明を聞く・読む)ばかりで、アウトプット(何も見ずに解く・説明する)が足りていません。
② 宿題が「終わらせること」だけの作業になっている
塾の宿題を毎回ちゃんと出しているのに、力がついている実感がない…。
よく見てみると、
- 丸つけはしているけれど、間違い直しはテキトウ
- 時間を区切らず、だらだら長時間かけている
- 「終わったかどうか」だけが基準になっている
といった状態になっていることが多いです。
これでは、「やった時間」だけ増えて、「できる問題」の数はあまり増えないままになってしまいます。
③ 塾でやっていることと、家庭学習の方向がバラバラ
塾では「ここを重点的にやろう」と決めていても、家庭では別の教材をどんどん進めていたり、
テスト前に「とりあえずワークを最初から全部やり直そう」となってしまったり。
つまり、塾と家庭で「今、一番がんばるべき場所」がズレている状態です。
どちらも頑張っているのに、力が分散してしまい、「これができるようになった」という手応えがぼやけてしまいます。
成績が上がらない「本当の理由」はここにある
理由① 「わかる」と「できる」の間に大きな川がある
授業で先生の説明を聞くと「なるほど、わかった!」となります。
でもテスト本番で必要なのは、「何も見ずに、時間内に、自力でできる」こと。
この「できる」状態になるためには、
- 解き方を頭の中で再現する(想起する)練習
- 似た問題を、自分の手を動かして何度か解く練習
がどうしても必要です。
ここを飛ばしてしまうと、「分かったつもり」のままテスト本番を迎えることになり、点数が安定して伸びません。
理由② 目標が「テストで◯点とる」だけになっている
「次のテストで80点とろうね」と目標を立てること自体は悪くありません。
ただ、そこで終わってしまうと、「じゃあ今日・今週は何をどれだけやるの?」が決まりません。
本当に効果が出る目標設定は、
- テスト目標(例:次の数学で80点)
- 単元目標(例:連立方程式の文章題を8割取れるように)
- 今日の目標(例:文章題3問を時間を計って解き、間違いをやり直す)
のように、「上から下へ」細かく具体的になっている状態です。
ここが曖昧なままだと、がんばり方がフワッとしてしまい、「量のわりに伸びない」につながります。
理由③ 塾・家庭・本人の「役割分担」が決まっていない
塾は「わからないところを教えてくれる場所」だけではありません。
本来は、
- どの単元をどの順番で、どのペースでやるかを決める
- 勉強のやり方やノートの使い方を整える
- 家庭学習で何をしてほしいか、確実に伝える
といった「学習の設計図」をつくる役割があります。
一方で、家庭には、
- 勉強時間と環境を確保する
- 塾からの指示を、なるべく現実的に回せるようサポートする
- 頑張ったところに目を向けてあげる
という役割があります。
この役割分担が曖昧だと、「塾におまかせ」で家庭学習がふわっとしたままになったり、
逆に、家庭で独自のやり方をどんどん足してしまって、軸がブレることもあります。
塾と家庭でできる「伸びる勉強」の整え方
① 勉強のやり方を「3ステップ」にする
まずは、お子さんの勉強のやり方を、シンプルな手順にしてあげると効果的です。例えば数学なら:
- 解説を見ながら、例題をマネして解いてみる
- 解説を閉じて、少し似た問題を時間を計って解く(5〜10分)
- 間違えた問題に印をつけて、その日のうちにもう一度解き直す
このとき、「③のやり直し」までセットで1回の勉強と考えるのがポイントです。
問題を解いた後の「振り返り・修正」があって初めて、テストで使える力になっていきます。
② 目標は「テストの点」より「今日できるようになること」で決める
目標の立て方を少し変えるだけで、勉強の質はぐっと上がります。
おすすめは、親子でこんな会話をすることです:
- ×「今日はどれくらい勉強したの?」
- 〇「今日は何ができるようになった?」
たとえば、
- 「be動詞と一般動詞の区別テストを、10問中9問正解できる」
- 「一次関数のグラフの問題を3問、自力で解ける」
といった「できる・できないがハッキリ分かる目標」を一緒に決めてあげると、
お子さん自身も「何を頑張ればいいか」が見えやすくなります。
③ 塾との情報共有をシンプルにする
家庭学習と塾の指導をうまくかみ合わせるには、「細かく書類を作る」より「シンプルに共有する」ことが大事です。
- 面談や三者懇談のときに、「家ではここでつまずいているようです」と一言そえて伝える
- テスト前後に、「この単元が苦手そう」「この教科は自信がありそう」など、ざっくり感想を共有する
- 塾からの提案(重点単元・勉強のやり方)を一つか二つに絞って、家庭で意識してもらう
この程度のやり取りでも、塾と家庭で「今どこを伸ばしたいか」のイメージがそろいやすくなり、勉強のムダ打ちが減っていきます。
まとめ:量より先に「方向」と「やり方」を整えてあげる
塾に通っても成績が上がらないとき、
「まだまだ量が足りないのかな」と考えてしまいがちです。
でも、多くの場合は、
- 「わかる」と「できる」をつなぐ練習(解き直し・想起)が足りていない
- 目標が「点数」だけで、今日やることが具体的になっていない
- 塾と家庭で、頑張る方向がそろっていない
といった“やり方と設計”の問題です。
保護者の方には、
- 「今日は何ができるようになった?」と聞いてみる
- テストの点だけでなく、勉強のやり方が変わったことを認めてあげる
- 塾と情報を共有し、「今はここを重点的に」という軸をそろえる
この3つを意識していただけると、お子さんの勉強はぐっと安定していきます。
もし、「うちの子も量はやっているはずなのに…」と感じておられるなら、
一度、「やり方」と「目標」と「連携」の3つを一緒に見直してみませんか?
お子さんのがんばりが、ちゃんと結果につながるように。
ご家庭と塾で、少しずつ環境とやり方を整えていきましょう。

