保護者の声かけで成績が変わる|やってほしい言葉・避けたい言葉と具体例まとめ

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保護者の声かけで成績はこう変わる:やってほしい言葉・避けたい言葉

「もっと勉強してほしい」「でもガミガミ言って嫌われたくない」——成績のことになると、つい言い方がきつくなってしまう…という保護者の方は多いと思います。

同じ「勉強してほしい」という気持ちでも、かける言葉の選び方によって、子どものやる気は大きく変わります。しかも、その積み重ねが、中学生・高校生くらいになると成績の差として表れやすいことも分かってきています。

ここでは、「責める声かけ」と「支える声かけ」の違いを、できるだけ具体的なフレーズ例とともにまとめました。今日から一言ずつ変えていける内容になっていますので、「全部完璧にやろう」と構えず、気になったところから気楽に取り入れてみてください。

1. なぜ「声かけ」で成績が変わるのか

1-1. 子どものやる気は「環境」とのセットで育つ

子どもの勉強へのやる気は、生まれつきの性格だけで決まるわけではありません。家庭や学校で、どんなふうに声をかけられているかという「環境」とセットで育っていきます。

心理学の研究では、子どもが次の3つを感じられる環境だと、学習への意欲や成績が高まりやすいことが示されています。

  • 「できた」「分かった」という有能さの感覚
  • 「自分で決められている」という自主性の感覚
  • 「親に受け入れられている」という安心感

同じテストの点数でも、

  • 「またこんな点数!もうちょっと真面目にやりなさい!」
  • 「悔しいね。どこでつまずいたか、一緒に作戦考えようか」

と声をかけられた子どもでは、「自分はダメだ」と感じるのか、「工夫すれば伸びるかも」と感じるのかが大きく変わります。この「感じ方の違い」が、長い目で見ると、勉強への粘り強さや成績の差につながっていきます。

1-2. 「責める声かけ」と「支える声かけ」の決定的な違い

「責める声かけ」と「支える声かけ」は、次のようなところが違います。

  • 何を見ているか
    責める声かけ:点数・ミス・短所だけを見る
    支える声かけ:努力・工夫・小さな成長にも目を向ける
  • どこに焦点を当てるか
    責める声かけ:「過去の失敗」に焦点
    支える声かけ:「これからどうするか」に焦点
  • 誰を責めるか
    責める声かけ:子どもの性格・能力を責めがち
    支える声かけ:行動ややり方だけを一緒に見直す

例えば、同じ「50点のテスト」を見た場面でも、

責める声かけの例:

  • 「なんでこんな点数なの?ちゃんとやってないでしょ」
  • 「ほかの子はもっとできてるのに、どうしてあなたは…」

支える声かけの例:

  • 「今回は50点だったね。どの問題が難しかった?」
  • 「ここは合ってるね。間違えたところを一緒に整理してみようか」

どちらも「もっとできるようになってほしい」という気持ちは同じです。ただ、前者は子どもに「責められた」「否定された」という印象を残し、後者は「応援されている」「一緒に考えてくれている」という印象を残します。この差が、少しずつ子どもの心に蓄積していきます。

2. 成績を伸ばす「支える声かけ」のコツ

2-1. 結果より「プロセス(過程)」をほめる

子どものやる気を長く保つうえで、とても効果的なのが「結果ではなくプロセスをほめる」という関わり方です。

小さいころから「頭がいいね」「天才だね」といった「能力そのもの」をほめられて育った子どもよりも、「よく考えたね」「そのやり方工夫したね」といった努力や工夫をほめられて育った子どものほうが、粘り強く勉強に取り組み、テストの成績も良くなりやすいことが報告されています。

日常の声かけでは、次のような「言い換え」を意識してみてください。

テストでいい点を取ったとき:

  • 避けたい:
    「やっぱり頭いいね!」「天才じゃん!」
  • おすすめ:
    「毎日コツコツワークやってた成果が出たね」
    「間違えた問題を解き直してたのが良かったね」

少し成績が上がったとき:

  • 避けたい:
    「このくらいできて当然でしょ」「まだまだだね」
  • おすすめ:
    「前より5点上がったね。どんな勉強を増やしたの?」
    「漢字のミスが減ってるね。どこを意識したの?」

ポイントは、「何を」「どう頑張ったのか」を具体的に言葉にすることです。子どもは、「頑張れば伸びるんだ」という感覚を少しずつ体で覚えていきます。

2-2. 子どもの「自主性」を尊重する一言を添える

成績が伸びやすい子どもたちは、「自分で決めて勉強している」という感覚を持ちやすいことが分かっています。親からの支援でも、「こうしなさい」と一方的に指示されるより、「どうしたい?」「どっちにする?」と選択肢を与えられる関わりのほうが、やる気や成績に良い影響があるという研究がいくつも出ています。

とはいえ、「好きにしていいよ」だけでは、勉強しない方向に流れてしまうこともあります。おすすめなのは、

  • 親が枠組みを示す
  • その中で子どもに選ばせる

というスタイルです。

具体的には、次のような声かけが使えます。

  • 「今日は30分と45分、どっち勉強にする?」
  • 「先に数学と英語、どっちからやる?」
  • 「9時までには勉強を終えたいんだけど、逆算すると今から何をする?」

親が「時間やルール」の大枠を決め、その中で子どもに選ばせることで、「やらされている」から「自分で決めた」に変わっていきます。この感覚が、長期的なやる気と粘り強さにつながります。

3. 成績を下げがちな「責める声かけ」と、その言い換え

3-1. 人格を否定する言葉は「事実+提案」に変える

つい感情的になってしまうと、

  • 「だからあなたはダメなのよ」
  • 「やる気ないなら、もう知らないからね」

といった、「性格」や「人柄」そのものを否定する言葉が出てしまうことがあります。

こうした言葉は、子どもに「自分はダメな人間なんだ」というイメージを植え付けてしまい、勉強への意欲だけでなく、自己肯定感やメンタルにもマイナスに働きやすいと指摘されています。

おすすめなのは、同じ内容を伝えるにしても、

  • 事実(何が起こっているか)
  • 気持ちの理解(子どもの感情)
  • 次への提案(どう改善するか)

の3つに分けて話すことです。

たとえば、

  • NG:
    「またゲームばっかり!だから成績が悪いのよ」
  • 言い換え例:
    「今、宿題よりゲームの時間が長くなってるね(事実)。ゲームで気分転換したいのも分かるよ(気持ち)。宿題を30分やってからゲームにするのはどう?(提案)」

このように、「ダメ出し」だけで終わらせず、「どうしたらよくなるか」まで一緒に考えることで、子どもは「怒られた」ではなく「相談できた」と感じやすくなります。

3-2. 比較・脅しの言葉は「一緒に作戦会議」につなげる

成績の話になると、つい出てしまいがちな言葉が、「比較」と「脅し」です。

よくあるパターンとしては、

  • 「○○ちゃんはもっといい点取ってるらしいよ?」(比較)
  • 「こんなんじゃ高校行けないよ」(脅し)

といったものがあります。一時的に子どもを動かすことはできても、「どうせ自分なんて」「勉強=苦しいもの」という意識が強まり、長い目で見ると逆効果になりやすいことが指摘されています。

代わりに、おすすめしたいのは「一緒に作戦会議をする」というスタンスです。

  • 「クラスの平均点は60点くらいみたいだね。今回は50点だったけど、次はどのくらいを目標にしようか?」
  • 「高校のことを考えると、今から少しずつ勉強を増やしたいな。あなたはどの教科からなら始められそう?」
  • 「不安になる気持ちも分かるよ。その不安を少し減らすために、今週できそうなことを一つ決めてみようか」

比較や脅しではなく、「現状」と「目標」を一緒に見ながら具体的な作戦を立てることで、子どもは「怒られて終わり」ではなく、「自分で動ける感覚」を持ちやすくなります。

4. シーン別・今日から使える声かけ例

4-1. テスト前後の声かけ

テスト前は、子どもも不安とプレッシャーでいっぱいです。ここでの声かけが、「もう無理だ…」になるか、「やってみよう」に変わるかの分かれ道になります。

テスト前のおすすめフレーズ:

  • 「今までやってきた分はちゃんと力になってるよ。今日はその分を出しておいで」
  • 「全部できなくて大丈夫。自分が解けそうな問題から落ち着いてね」
  • 「緊張してもOK。緊張しながらでもできることをやれば十分だよ」

テスト後、「点数を見てつい責めてしまう…」という方は、「まず気持ち、そのあと振り返り」と覚えておくと楽になります。

テスト後のおすすめフレーズ:

  • いい点数だったとき:
    「嬉しそうだね。どんな勉強が役に立ったと思う?」
  • イマイチな点数だったとき:
    「悔しいよね。その気持ち、大事だと思うよ。どこでつまずいたか、一緒に見てみようか」
    「今回は思ったようにいかなかったね。次に向けて、1つだけ変えるとしたら何を変える?」

「よかった/悪かった」で終わらせず、「何がうまくいって」「何が課題か」を一緒に言葉にする習慣が、少しずつ「勉強の仕方」を育てていきます。

4-2. 宿題・勉強時間・スマホめぐりの声かけ

宿題やスマホのことで毎日のようにバトル…という家庭も多いと思います。この場面では、親の「イライラ」が前面に出やすく、「責める声かけ」になりがちです。

ここでも、「枠を示して、その中で選ばせる」スタイルが役立ちます。

宿題の声かけ例:

  • NG:
    「まだ宿題やってないの!?」「いいから今すぐやりなさい!」
  • 言い換え例:
    「宿題、今日のどのタイミングでやる予定?(事実確認)」
    「○時までには終わってると安心だな。その間、いつ始める?」

スマホの声かけ例:

  • NG:
    「スマホばっかり!もう取り上げるからね」
  • 言い換え例:
    「今はスマホの時間が長くなってるね。自分でも気になってる?」
    「宿題30分とスマホ30分、どっちを先にする?」
    「平日は夜9時まで、土日は10時まで、ってルールにするのはどう?」

最初から完璧なルールを作る必要はありません。「まず1週間ためしてみよう」「合わなかったら一緒に見直そうね」と柔らかく伝えると、子どもも受け入れやすくなります。

5. 保護者自身の心が軽くなる考え方

5-1. 「完璧な声かけ」を目指さなくて大丈夫

ここまで読んで、「こんなふうに毎回うまく声かけなんてできない…」と感じたかもしれません。でも、心配しなくて大丈夫です。

親の関わりが子どものやる気や成績に影響するとはいっても、「いつも100点満点の声かけ」をする必要はありません。むしろ、たまに失敗したりぶつかったりしながらも、「全体として応援するスタンスが多い」ことのほうが大切だと考えられています。

ですから、

  • 「昨日より、1つだけ言い方を変えてみる」
  • 「今日は責める言葉を言ってしまったから、明日は支える言葉を意識してみる」

といった、「少しずつ」の変化で十分です。

5-2. イライラしてしまった後のリカバリーの一言

保護者も人間ですから、仕事で疲れていたり、自分に余裕がないとき、きつい言い方になってしまうことはあります。それ自体を「ダメな親だ」と責める必要はありません。

大切なのは、「あとから修正する力」です。子どもとの関係は、あとからの一言で立て直すことができます。

イライラして責めるようなことを言ってしまった後は、こんなフレーズがおすすめです。

  • 「さっきはきつい言い方しちゃってごめんね。テストが心配で、つい強く言い過ぎた」
  • 「怒っているように聞こえたかもしれないけど、本当は応援したいだけなんだ。もう一回、一緒にどうするか考えさせてくれる?」
  • 「さっきの言い方はよくなかったね。言い直すと…『次どうしたらうまくいくか、一緒に作戦を立てたい』ってこと」

保護者が自分の言い方を振り返り、素直に言い直す姿は、子どもにとって「失敗してもやり直していい」という大切なメッセージにもなります。

今日からできることは、「責める声かけ」をゼロにすることではなく、「支える声かけ」を少しずつ増やしていくことです。一言一言の積み重ねが、子どもの成績だけでなく、親子の関係もゆっくりと変えていきます。


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