中学生から始める将来の進路の考え方入門|「やりたいことが決まってない」が普通な理由と親子でできること

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中学生から始める『将来の進路の考え方』入門

1. 将来の進路は「まだ決まってない」で大丈夫

1-1. 中学生で進路が決まっている人は少数派

「将来の夢は?」「どんな仕事がしたい?」と聞かれて、はっきり答えられない。そんな自分を「ダメなのかな」と心配している中学生はとても多いです。でも、実はそれがごく普通の状態です。

人の興味や得意なことは、中学生から高校生にかけて大きく変わっていきます。部活や習い事、友だちとの会話、SNSや動画など、日々触れるものが増えるほど「おもしろそう」が増えていくからです。まだ見たことのない仕事もたくさんあるので、今の時点で一つに絞る方が難しいと言えます。

「将来やりたいことが決まっている人」は目立つので多く見えるかもしれませんが、クラスの中では少数派であることがほとんどです。将来が決まっていないからといって焦る必要はなく、「これから探していけばいい時期なんだ」と考えて大丈夫です。

1-2. 「決まっていない不安」とうまく付き合うコツ

とはいえ、まわりの友だちが「看護師になりたい」「エンジニアになりたい」と口にしているのを聞くと、「自分だけ何も決まってない」と不安になることもあります。この不安は、「決まっていない」という事実そのものよりも、「このまま何もしなかったらどうしよう」という心配から生まれます。

そこで大事なのは、「いきなり答えを出そう」としないことです。進路はテストのように一つの正解を当てるものではなく、「今の自分に合いそうな方向を少しずつ試しながら探すもの」に近いです。

今日できることは、「進路を決める」ことではなく、「興味を広げてみる」「少し調べてみる」「大人に話を聞いてみる」といった、小さな一歩を踏み出すことです。この小さな一歩を積み重ねていけば、不安は少しずつ「まあ何とかなるかもしれない」という感覚に変わっていきます。

2. 自分の「好き・得意」の見つけ方

2-1. 日常の「なんとなく楽しい」を言葉にしてみる

進路を考えるときに、「夢」や「天職」のような大きな言葉を思い浮かべると、かえって動けなくなってしまうことがあります。最初の一歩としては、「なんとなく楽しい」「つい時間を忘れてしまうこと」に目を向けるのがおすすめです。

例えば、次のようなことはありませんか。

  • 授業の中で、他の科目よりも少しだけ集中しやすい科目がある
  • 動画でよく見てしまうジャンルが決まっている(ゲーム解説、スポーツ、メイク、科学実験など)
  • 友だちに「それ教えて」と言われることがある

こうした「なんとなく」をノートやメモアプリに書き出してみると、自分の興味の方向が少しずつ見えてきます。最初は一行でもかまいません。「理科の実験はおもしろい」「イラストを描いていると時間が早く感じる」といった短いメモでも、後から見返すとヒントになります。

2-2. 小さな「できた」を集めて得意を見つける

「得意なことなんてない」と感じる人も多いですが、それは「すごく上手なこと」だけを得意と決めつけてしまっているからかもしれません。進路を考えるうえでは、「人よりほんの少しだけスムーズにできること」も立派な得意の種になります。

たとえば、次のようなことも十分「得意の芽」です。

  • プリントをきちんとファイルするのが苦にならない
  • 初対面の人ともあまり緊張せず話せる
  • パソコンやスマホの新しいアプリをさわるのが好きで、覚えるのが早い
  • 部活で後輩に教えるのがわかりやすいと言われる

こうした小さな「できた」を意識的に集めてみると、「整理が得意」「人と話すのが得意」「新しいものに慣れるのが早い」など、自分の強みの方向が少しずつ分かってきます。仕事の世界では、こうした「得意」が活かせる場面がたくさんあります。

3. 興味の広げ方と情報の集め方

3-1. ネット検索より「人に聞く」「体験する」を増やす

進路について調べようと思うと、まずインターネットで検索したくなるかもしれません。もちろんネット情報も役に立ちますが、それだけだと「どの情報を信じていいかわからない」「イメージが湧かない」と感じやすいものです。

そこでおすすめなのは、「人に聞く」「実際に体験する」をセットにすることです。

  • 学校の先生に、「この教科が少し好きなんですが、関連する進路ってありますか?」と聞いてみる
  • 親や身近な大人に、「仕事のどんなところが楽しいか」をインタビューしてみる
  • 図書館の職業ガイド本や体験談の本をのぞいてみる

誰かの具体的な体験を聞いたり、職場見学や体験イベントに参加したりすると、「その仕事をしている自分」をイメージしやすくなります。ネット情報は、「キーワードを見つけるため」「気になった分野をもう少し深く調べるため」と考えるとバランスが取りやすくなります。

3-2. オープンキャンパスや職業体験の上手な使い方

高校や専門学校、大学のオープンキャンパス、自治体や学校が行う職業体験などは、進路を考えるうえでとてもよいきっかけになります。「まだ全然決まってないけど行っていいのかな」と心配する必要はありません。むしろ、「決める前に行く」くらいの気持ちで参加して大丈夫です。

参加するときは、次のポイントを意識すると情報が頭に残りやすくなります。

  • 「楽しそうだったこと」「ちょっと違うかもと思ったこと」をメモしておく
  • 先生や学生・職員の雰囲気をよく観察して、「ここで学ぶ自分」をイメージしてみる
  • わからないことはその場で質問してみる(「勉強はどれくらい大変ですか?」など)

一度行っただけで進路が決まる必要はありません。参加を重ねるうちに、「自分にはこういう環境が合いそうだな」「この分野は思っていたのと違ったな」と、少しずつ自分の軸が育っていきます。

4. 保護者にできるサポート

4-1. 答えを決めつけずに「聞き役」になる

保護者の方にとっても、子どもの進路は大きな心配ごとの一つかもしれません。つい「そろそろ将来のことをちゃんと考えなさい」「この高校に行った方がいい」と言いたくなる場面もあるでしょう。

ただ、中学生の時期は「自分で考えて決める力」を育てていく途中の段階です。まずは、「どんなことに興味があるの?」「最近楽しいと思ったことは?」と、答えを決めつけずに聞いてあげることが大きな支えになります。

子どもが「別に…」「わかんない」としか答えない時期もありますが、そのときも「そうか、まだピンとこないよね」と、一度受け止めてあげると安心感につながります。安心して話せる雰囲気があるほど、子どもは少しずつ本音を話しやすくなります。

4-2. お金・進学の情報は大人が下調べしてあげる

進路を考えるとき、「学費はいくらくらいかかるのか」「奨学金や支援制度はあるのか」など、お金や制度の話も大切になります。ただ、これらは中学生だけで調べて理解するには難しい内容が多いです。

そこで保護者の方にお願いしたいのは、次のような「情報の下調べ」です。

  • 行けそうな高校・専門学校・大学の種類や違いをざっくり整理しておく
  • 学費や通学費、奨学金・支援制度など、お金に関する基本的な情報を確認しておく
  • オープンキャンパスや説明会の日程をチェックし、一緒に参加できる日を提案する

保護者が「選択肢」と「現実的な条件」を整理しておくことで、子どもは「自分は何をしたいか」に集中しやすくなります。「どの道を選んでも、家族で一緒に考えるから大丈夫だよ」というメッセージを伝えてあげることが、子どものチャレンジを後押しします。

5. 進路を考えるうえで大事にしたいこと

5-1. 「一生の仕事」を今決めなくていい

昔は「一つの会社でずっと働く」というイメージが強くありましたが、いまは大人になってから仕事を変えたり、学び直したりする人もたくさんいます。中学生の段階で「一生の仕事」を決める必要はありません。

今考えるべきことは、「高校でどんなふうに過ごしたいか」「どんな分野なら勉強してもいいかなと思えるか」といった、数年先を見すえた選択です。その選択の積み重ねが、結果的に自分に合った仕事につながっていきます。

「この進路を選んだら一生変えられない」と考えると、とても重たく感じてしまいます。「まずはここからスタートしてみよう。合わなかったらまた考えればいい」と、少し軽く考えることも大切です。

5-2. 変わっていく自分を前提に考えてみよう

中学生から高校生、そして大人になるまでのあいだに、人の考え方や興味は大きく変わっていきます。今好きなことや得意なことも、この先の経験によって少しずつ変わるかもしれません。

だからこそ、「今の自分の好き・得意」を大事にしながらも、「これから変わっていく自分」も前提にして進路を考えるのがおすすめです。

  • 今ははっきり決まっていなくても、「ちょっと気になる」を大切にする
  • 新しいことに少しずつチャレンジして、興味の幅を広げていく
  • いつでも方向転換できるように、基礎的な勉強や生活習慣を整えておく

進路は、一度決めたら終わりではなく、何度も考え直しながら形を変えていくものです。「将来やりたいことなんて決まってない」がスタートラインであり、その上に、あなた自身の経験や出会いが積み重なっていきます。

今できる小さな一歩を、親子で一緒に探していきましょう。


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