こんにちは。慶京セミナー宇治小倉校の池藤です。
今回は、「部活も本気、勉強もあきらめたくない」という中高生と、その保護者の方に向けて、
部活と勉強を両立している子が“実際にどう時間を使っているのか”を、できるだけ科学的な視点も交えながら整理してみます。
「人の集中力や習慣の性質」をふまえたうえで、日々の行動に落とし込める形を目指します。
1. なぜ「部活ガチ勢」は勉強時間が足りなくなるのか?
1-1. 物理的な時間の制約
平日の生活リズムをざっくり分解してみると、次のようになります。
- 学校(授業)…6〜7時間
- 部活…2〜4時間
- 移動・食事・お風呂など…3時間前後
- 睡眠…7〜8時間は欲しい
ここまでで、すでにほぼ1日が埋まってしまうことがわかります。
「勉強にあてられる時間」は、実感としては1〜2時間あれば良い方という子も多いはずです。
つまり、「時間が足りない」のは気のせいではなく、本当にカツカツのスケジュールの中で生活している、というのがスタート地点です。
1-2. 疲労と集中力の関係
部活で全力を出した後は、筋肉だけでなく脳も疲れます。
疲れているときは、同じ30分勉強しても「集中の密度」が落ちてしまいます。
ここで大事なのは、
- 勉強時間をただ増やす発想ではなく、
- 限られた時間でどれだけ「集中した勉強」をつくるか、
という考え方に切り替えることです。
2. 両立している子がやっている「時間の使い方」
2-1. 「フルコマ」でやろうとしない
両立できている子の多くは、長時間ぶっ通しで勉強しているわけではありません。
むしろ、
- 平日は「短く・回数多く」
- 休日に「少し長めのまとまった時間」
という形で、メリハリのある時間設計をしています。
例えば、
- 平日:部活後〜寝るまでのうち30〜60分×1〜2セット
- 土日:部活がない時間帯に90〜120分×1〜2セット
といったイメージです。
毎日3時間を目指すよりも、「短時間でも必ず机に向かう」ことを習慣にしている子の方が、結果として成績をキープしているケースが多く見られます。
2-2. 「スキマ時間」を“作る”という発想
両立している子は、偶然スキマ時間を見つけるのではなく、自分で作りにいきます。
例としては、
- 朝:家を出る時間を10〜15分だけ早くして、その時間を単語・漢字に使う
- 移動中:電車・バスの中で英単語アプリ、あるいはプリントの見直し
- 部活前後:着替えが終わったあとや、ミーティング前の5〜10分を教科書チェックに使う
- 寝る前:ベッドに入る前の5分で1日の復習(今日覚えたことを声に出して確認)
このような「5〜10分」は、一つ一つは小さいのですが、積み重ねると1週間で1〜2時間ぶんの勉強時間になります。
2-3. 1日にやる教科は“欲張りすぎない”
部活で疲れている日に、
- 英語
- 数学
- 理科
- 国語
- 社会
と5教科全部をやろうとすると、ほぼ確実に続きません。
優先順位をハッキリさせて、
- 平日:「メイン1教科+サブ1教科」の2本立てまで
- テスト2週間前:少し教科数を増やす
くらいが現実的です。
3. 「優先順位の付け方」で差がつくポイント
3-1. 緊急ではないけれど重要なことを先に
テスト直前は、どうしても「明日までのワーク」「明日の小テスト」など、“緊急度が高いもの”に振り回されがちです。
両立している子は、普段から、
- 英単語や計算などの積み上げ系
- 苦手単元の基礎固め
といった「今すぐ困らないが、やらないと将来困ること」に、少しずつ時間を投資しています。
目安として、
- 平日の勉強時間の半分は「積み上げ系」(単語・計算・文法など)
- 残り半分を「学校ワーク」「宿題」「小テスト対策」
のように配分しておくと、テスト前に慌てにくくなります。
3-2. 「やることリスト」は“時間”ではなく“単位”で考える
「今日は2時間勉強する!」という目標だと、ダラダラしていても2時間が過ぎればゴールになってしまいます。
両立している子は、
- 英単語を30個復習
- 数学ワークを2ページ
- 理科の暗記カードを1セット分
のように、「量で区切った目標」を立てることが多いです。
この方が、
- 終わったかどうかがはっきり分かる
- 達成感が得やすく、習慣になりやすい
というメリットがあります。
3-3. 「絶対に削らないもの」を決めておく
部活も勉強も頑張るためには、削ってはいけないものを先に決めておくことが大事です。
代表的なのは、
- 睡眠時間(中高生なら7時間前後はほしい)
- 食事の時間
- お風呂+リラックスタイム(短くてもよい)
これらを先に確保したうえで、残った時間を「部活」と「勉強」でどう分けるかを考える、という順番がポイントです。
4. 部活後でも集中しやすくする「勉強モードへの切り替え」
4-1. ルーティンを決めて、脳に“合図”を送る
プロのスポーツ選手が、試合前に決まった動作をするのと同じように、
「勉強を始める前の小さなルーティン」を決めておくと、集中するスイッチが入りやすくなります。
例えば、
- 帰宅後、5分だけ机の上を片付ける
- 水かお茶を一杯飲んで、タイマーを30分にセットする
- 最初の5分は、「単語の見直し」など軽めのタスクから始める
といった具合です。
毎日同じ流れを繰り返すことで、「このパターンになったら勉強モード」と脳が学習していきます。
4-2. 最初の5分は「体を止める」「スマホを離す」だけでもOK
強い意志に頼り続けるのは難しいので、勉強のハードルをできるだけ下げることも大切です。
例えば、
- 最初の5分は「机に座るだけ+教科書を開く」
- スマホは、部屋の外か、少なくとも手の届かない場所に置く
この「5分だけ」という入り口を作ることで、いったん始めてしまえばそのまま続けやすくなる、という性質を利用します。
4-3. マルチタスクを避ける
「音楽を聴きながら」「LINEをしながら」「動画を流しながら」…という“ながら勉強”は、集中力を細かく分断してしまいます。
部活で疲れているときほど、
- 「今はこれだけ」と一つに絞る
- タイマーで25〜30分だけ集中して、その後5分休憩を入れる
といった形で、シンプルな集中スタイルにした方が、結果的に効率が上がります。
5. 教科別・よくある「両立のつまずき」と対策
5-1. 英語:単語・文法が「後回し」になりやすい
英語は、
- 単語・熟語
- 文法
- 長文読解
の3つが柱ですが、長文ばかりに時間を使って、単語・文法の基礎が抜けがちです。
対策:
- 平日のスキマ時間は単語と文法だけに集中
- 長文読解は休日にまとめて取り組む
- 単語は「1日30個×○日」など小さなノルマを決める
5-2. 数学:その日の内容を「その日のうちに」軽く復習
数学は、分からないまま3日以上放置すると、どんどん質問しづらくなる教科です。
対策:
- 授業で習った例題を、その日のうちに自力で1回解き直す
- わからない問題には「?」マークをつけておき、週末にまとめて質問
- 計算系は、1日10分だけでも継続する
5-3. 理・社:テスト前だけ“詰め込む”スタイルをやめる
理科・社会は、テスト前に一気に覚えるスタイルになりがちですが、部活が忙しい子ほどそれはリスクです。
対策:
- 平日に「教科書1ページだけ」読む日を作る
- 覚えた内容を、親や友だちに1分で説明してみる(説明しながら覚える)
- 定期的に「ミニ復習日」をカレンダーに入れておく
6. 保護者ができる「両立サポート」
6-1. 「結果」より「プロセス」を一緒に見る
テストの点数や通知表だけを見てコメントすると、どうしても「もっと頑張れ」「部活を減らしたら?」という話になりがちです。
それよりも、
- どんな時間帯なら集中しやすいか
- どの教科にどれくらい時間をかけているか
- スキマ時間を生かせているか
といった「日々のプロセス」を一緒に振り返ることで、現実的な改善案が見えてきます。
6-2. 「全部やれ」ではなく「優先順位を一緒に決める」
部活も勉強も本気で取り組んでいる子は、すでに頑張っている自覚があります。
そこに「もっと」「全部」というメッセージが重なると、
- 何から手をつけていいのか分からない
- 自分はダメだ、と感じやすくなる
といった負担につながります。
おすすめなのは、
- 「この1週間で、一番大事な教科はどれ?」
- 「平日は、何分だけなら勉強を続けられそう?」
といった質問を投げかけ、優先順位を一緒に決める対話です。
6-3. 睡眠と食事の「土台づくり」をサポート
勉強も部活も、睡眠不足と乱れた食事の上では続きません。
家族としてできることは、
- なるべく同じ時間に寝て同じ時間に起きる生活リズムを一緒に作る
- 試合やテスト前に、「徹夜で頑張る」方向にいかないよう声をかける
- 食事で、極端なダイエットや偏食にならないよう見守る
といった、土台の部分を整えてあげることです。
7. まとめ:両立は「根性」より「設計」で決まる
部活と勉強の両立は、
- 特別な才能がある子だけができること
- 根性で乗り切るしかないこと
ではありません。
ポイントは、
- 1日を「短い勉強のかたまり」に分けて、スキマ時間も含めて設計すること
- 優先順位を決めて、「全部やろう」としないこと
- 睡眠・食事・生活リズムという土台を削らないこと
の3つです。
部活に本気で取り組める力は、そのまま勉強にも活かせる大きな強みです。
「根性だけ」に頼らず、時間の使い方と習慣づくりを工夫して、
「部活も勉強もやりきった」と胸を張れる毎日を一緒に目指していきましょう。


